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二楽亭へようこそ![されどバナナ、なれどバナナ その6 [小説]

第6話

「!!!」
驚くふたりが急いで迎撃の態勢を取ると、
周囲を警戒する。
「オオゼキ!
駅から園の入り口にいたるまでに張り巡らした、
我等の監視網をよくぞどうやって潜り抜けた!
だが、
知られたからにはただでは帰さんぞ!」
そう息巻く声の主は、
温室の横柱に足だけでぶら下がっている男だった。
「ナベシマ…、
バテレンガッパの貴様がいるということは,ここは…」
急にきりっとしたオオゼキの背後で、
コクリュウとアラマサが、
「普通は本園から行くもんなぁ」
「酔っ払ってたからなんていえないもんなぁ」
と声を潜めて話している.
その脇で、
ナベシマと呼ばれた河童の眷属とオオゼキは話を続けている。
「ご明察だ。
ここはすでに我々、
九州伴天連(ばてれん)河童会が占領している。とっとと帰れ」
「日本独自の大乗契約理論で神の無限の愛を説く貴様らが、
選民思想たる第二契約者に合力(ごうりき)する気か!?」
「え? なんの話だ?
われらはバナナ高騰を利用して布教資金を調達するために…」
一瞬あっけにとられたものの、
なんだ、そうかとばかりに手を打ったオオゼキが、
「じゃあ、相場の1.5倍出すから、
バナナ売ってくれ」
といきなり買い付け交渉を開始する。
「えっ!? あ、はい。
お売りします…よ。
……って、お前らバナナを奪いに来たんじゃ…?」
意表を突かれた形のナベシマは完全に毒気を抜かれていた。
「糖度20以上のバナナなら、
3倍は出すが、どうする?」
「ちょうど今開発中の雨林30号は、
糖度20越えをコンスタントに出せる新品種でございましで…」
貿易の盛んな九州にもまれた伴天連河童たちだけに、
商機には敏感なのは承知していたオオゼキだったが、
ナベシマの態度が一変したのを見て、
地獄の沙汰も金次第とはよく言ったもんだと少しあきれた。

つづく
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二楽亭へようこそ![されどバナナ、なれどバナナ」 その5 [小説]

管理人 桂木 萌です。
もうしわけありません。
間違えて6話を先に公開してしまいました。
こちらが第5話になります。

大船駅から14時台の特急踊り子号に乗り込んだ
オオゼキ以下3名は、
駅弁の名店・大船軒で鯵の押し寿司とカップ酒を買いこんで、
すっかり物見遊山を決めこんでいた。
「バナナをもらいに行くのに3人もいらんとは思うんだが、
ボックス席を自由席で気兼ねなく使うには最低3名は
必要だからなぁ…コクリュウ、アラマサ、お前らも食え食え」
押し寿司を包んでいる紐をぶちきると
びりびりとぞんざいに包装紙をやぶって
ふたりに差し出す。
「いただきます」
鯵に少ししょうゆをたらして食べ始めたふたりに、
カップ酒を渡そうとすると、
「オオゼキさん、さすがに勤務中に酒は…」
と言って受け取ろうとしない。
「…はいそうですか。じゃあいいよ、
俺だけでひとりさびしく宴会しますよ…」
すっかりへそ曲げモードにはいったオオゼキは
カップ酒を一機にあおって、
窓際に並べていたカップの日本酒を右から順に飲み干していく。
辻堂、茅ヶ崎、平塚を過ぎる間も飲み続け、
大磯に着いたころにはガーガーといびきをかいて眠ってしまった。
若い世代では酒離れが進むと言われるものの、
もともと酒好きな河童たちだけに、
まだ窓際に残っているカップ酒を見ているうちに我慢できなくなり、
コクリュウが手を出すと、アラマサもいっしょになって飲み始めた。
目的地のある熱川に付くころには、
3杯目も飲み終わり、
ふたりともすっかり出来上がっていたが、
熱川到着のアナウンスが流れるとさすがに任務を思い出し、
爆睡していたオオゼキを無理やり起こして、
乗り過ごすことなく、なんとか下車に成功した。
タクシーに乗り込み行き先を告げると、
「え? 歩いてすぐよ?」
とドライバーに言われるものの、
半分寝ているオオゼキを運ぶのが面倒で、
「とにかくバナナ食べたいんで、お願いします」
と言うとドライバーは、
「あっ!? バナナね!
じゃあ本園じゃなくて別園の方がいいね。承知しました」
と言って車を出した。
とはいえ別館もそれほど遠くは無く、
すぐにワナナバニ園に着いた一行は、
ワンメータ分の代金を支払うとタクシーを降りた。
大人3人分のチケットを購入し、
あてどなくバナナを探して歩き始めたものの、
順路通りに園内を歩いて行くと、
すぐにバナナがたくさん生えている温室に行き当たった。
「あっ、バナナってあんな風に反り返って生えるんですね」
「へー、俺も初めて見た」
コクリュウとアラマサが上を見上げて呆けていると、
「ひょおお! 危ないっ!」
と叫んだオオゼキがふたりをどついて突き飛ばすと、
自分はコンパクトに回転してなんとか受身をとることに成功した。
「な、なにするんですかっ!」
突き飛ばされれ怒ったふたりだったが、
瞬時に我に返った。
ふたりが居た場所には、刀身に十字架を刻んだナイフが突き立っていたのだ。

つづく

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二楽亭へようこそ![されどバナナ、なれどバナナ」 その7 [小説]

第7話

たっぷり礼金をせしめたナベシマに駅まで送ってもらった一行は、
ちょうどやってきた東京行きの特急・踊り子号に乗り込むことができた。
「この分だと余裕で間に合うが、
片瀬江ノ島への到着時間を調べて、
ガードの本部に連絡いれておけ」
指示しながら、車両内をそれとなく見回していたクボタは、
駅の改札にいた二人組が自分たちの斜め後ろの席に乗り込んでいるのに気が付いた。
しばらくして、スマホをいじりはじめたのを見たクボタは、
「ちょっとトイレ行ってくるから、
車内販売のおねえさん来たら、
ビール買っとけ」
席を立って、こちら側を向いている二人組の方へ歩き出し、
その横で振り返ると、指で2本のサインを2度出しながら、
「ぬるくなるから、ひとり2本だけ買えよ」
と言って再び歩き出したと思った途端、
その二人組の窓側に座ってた方の首にヘッドロックをかける。
一瞬驚いて後手に回った通路側に座っている方へ、
コクリュウとアラマサがとびかかると、両手両足を抑え込んだ。
「よし、よくやったぞ。そのまま椅子に縛り付けとけ」
そう言っておいて、すでに落ちて気を失っている、
男の懐から拳銃を見つけると、
腰の後ろに突っ込んだ。
「クラークの手下か? と聞いてうんと言われても、
はいそうですかと信じるわけにもいかんのでな…」
もう一人の懐に呑まれていた銃を回収すると、
男が取り落とした携帯端末を拾いあげて、
内容を調べていく。
SNSの内容は一定時間を過ぎると消去する仕様になっているらしく、
5分以上前の内容は失われていたが、
残っているメッセージから、
こいつらの仲間が熱海で乗り込んでくるのは間違いないようだった。
「一番後ろの車両に移動するぞ」
特急列車に乗ったのが仇となり、
もう熱海まで旅程で途中駅には止まらない。
最終手段として、列車を急停車させるという手もあるにはあるが、
あとで掛かる経費を考えると、
音音が烈火のごとく怒るのが目に見えているので、
恐ろしくてとてもできない…。

つづく
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