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二楽亭へようこそ!「されどバナナ、なれどバナナ」 その1 [小説]

小町通りの反対側、
雪ノ下の路地裏にあるスィーツのお店「鎌倉ばなな道楽」。
フィリピンとエクアドルのバナナ農家と栽培契約を交わして
最高級品質のバナナを確保し、
まだ日本ではメジャーになってない
クリームバナナパイの専門店として繁盛してる。
「道楽」という名を冠してるということは、
もちろん、
妖(あやかし)に関する出来事の、
取り締まり一切を引き受ける弾正台のナンバー2、
化野音音(あだしのねね)が趣味で経営する
道楽チェーングループの業態のひとつ。
目玉商品のクリームバナナパイは、
ドリンクとのセットで1200円という強気の値段設定にもかかわらず、
観光地鎌倉では難なく受け入れられ、
連日、席につくまで30分はかかると言われるほどの盛況ぶりで、
ここ数ヶ月、音音のご機嫌はすごぶるよかった。
ところが…。

「量が確保出来ないってどういうことですかキザクラ!?
新パナマ病への対処は、
他の産地の病気に強い品種を生産する農場と契約することで
向こう5年は回避したはずでしょ?」
鎌倉の鬼門、丑寅(うしとら)にある西御門学園の体育館裏で
スマホの相手にひそひそと話している音音の声は少し怒った調子を帯びていた。
「いやー、
ところがですね、
今度発生した新種のカビが
種類を選ばないらしくて
フィリピンだけじゃなく、
他の国の農園も次々と感染してる状況で…」
「種類を選ばないって…」
電話の相手は、
愕然(がくぜん)とする音音に追い打ちを掛けるように、
「そんなわけで、来週からの必要量の確保が難しいんでさ。
今から、どこかで栽培してもらうにしても、
成木になるまで8か月はかかりやすから間に合わないですしねぇ…」
とにべもないことを言う。
「私もコネを総動員して探しますから、
キザクラ、あなたもせいぜい気張ってバナナを探してくださいましっ!」
怒りにまかせてスマホを切ると、
校舎に向かって歩き出した。
(このままじゃ、ウチの店のことはともかく、
世界中からバナナが消えてしまいますわ)
化野家のラボで新たに品種改良するとしても、
何世代か代を重ねないと難しいだろうし、
手詰まり気味の音音だったが、
放課後を待って知り合いに電話をかけ始めると、
今回の件で大もうけしてるお店があるのが浮き上がってきた。
160722i1.jpg
横浜赤レンガにある<禁断バナナ>。
今回の新型感染症のせいで高値がつき、
すっかり高級品と化したバナナを、
少し値上げしただけで使用量を全く減らさずに営業して、
バナナを求める客で連日ごった返している。
なぜそんな事が出来るのかというと、
細胞膜を破壊せずに冷凍し解凍する特別な技術を持っている上、
冷凍バナナのストックがあと5年分ほどあるという。
冷凍食品というと、
凍らせておけば1年や2年大丈夫だと思う人もいるようだが、
大体4か月ぐらいが美味しさを保つ期限で、
5年間も鮮度を保ち続けることができる技術など聞いたことがない音音は、
これには何か裏があるのではないかと勘ぐり始めた。

つづく
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