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二楽亭へようこそ![されどバナナ、なれどバナナ」 その3 [小説]

「マイナス4℃で細胞膜に傷をつけるとは
考えましたわね」
苦し紛れに当てずっぽうに言ったものの、
その一言でクラークの顔色が変わったのを音音は見逃さなかった。
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「そこはそれ、企業努力の結晶ですから、
おいそれとは教えられることではありませんな」
「じゃあ、御社の細胞膜破壊製法と
私どもの『鎌倉バナナ道楽』の営業権をかけて
バナナデザート勝負をしませんこと?」
「いいでしょう。
それでは1週間後ではどうでしょう?
場所は…」
「江の島に魯山人星岡窯を復元した
飛鳥グループの料理研究施設がありますの。
そのキッチンスタジアムではいかがかしら?」
「結構。では詳細はのちほど。
今日は存分に楽しんで行かれよ」
そう言うとクラークは店の奥に消えた。

お互いの利権をかけての
バナナデザート勝負は
一週間後の土曜の13時から行うことがきまり、
鎌倉ばなな道楽のチーフパティシエを努める
河童一族の桜花(おうか)が試行錯誤を重ねた結果、
極上のバナナクリームパイを作ることに成功していた。
ただそれには、
寒暖の差の激しい、
高度900メートルのフィリピンのプログ山周辺の高地で取れる
高級バナナ「プログ900」が必要だった。
さっそく鎌倉バナナ道楽の厨房で試食会を開き、
糖度20を越える「プログ900」の味に、
「口に入れた瞬間にとろけますわ。
クリーミィで甘いのに全然しつこくない。
これならいけますわ」
と音音たちが口々に絶賛するが、
当の桜花の顔色は冴えない。
それに気づいた音音が、
「なにか問題でも?」
と尋ねると、
「今、材料のプログ900を手配しているんですが、
もともと生産量が少ない上に
どうも例の新パナマ病にやられたようで、
手に入らないらしいんです。
それに変わるバナナもほとんど無いし、
あっても誰かが高値で押さえてしまったあとで…」
とうつむいた。
「きっと<禁断バナナ>仕業に違いありやせんぜ。
ここはひとつ荒事に出てもバナナを手にいれましょうや!」
息巻くクボタに、
「確かにわかり易い構図ですわね。
でもわかり易すぎて、
違和感がありますわ」
と音音が異を唱えた。
「音音の言うとおり。
バナナの買占めにクラークは関わってはいないわ」
そう言って厨房のドアの前に立っているのは、
例の乳ボーンな制服を着た<禁断バナナ>のメイドで、
場に一瞬緊張が走った。

つづく
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