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二楽亭へようこそ! 「ふたりの母」その10 [小説]

第10話

「困りますっ! 社長はアポなしの面会はなさいませんっ!」
警護が抑えるのも聞かず、
社長室の扉がバンと開け放たれる。
制止する河童ガードを押しのけながら入ってきたのは
歳の割に派手な和装の白髪の老婆と
その息子の雪夫だった。
「あら、雪ンバさんと盆暗息子の雪夫さんじゃございませんか」
全く動じた風のない音音と目が合った途端、
怒髪天を衝く勢いで雪ンバがまくし立て始めた。
「やってくれたねっ!
雪子の差金でぜんぶお前がやったんだろうっ!」
「あらあら、一体なんのことでしょう?」
馬鹿にしたような態度の音音に雪ンバはさらに激高する。
「ウチの店への嫌がらせだよっ!」
「なにを根拠にそんなことをおっしゃるの?
まさか従業員さんが転職したり、
食材が売ってもらえなくなったり、
クレーマーが大挙して押し寄せてきたり、
空の色が青かったりするのは、
みんな私の所為などとおっしゃりませんわよね?」
「何をしらじらしいっ! 
全部お前がやったんだってことは分かってるんだ。
痛い目見たくなかったら、とっとと嫌がらせをやめさせなっ!」
今にも湯気を吹き出しそうな真っ赤な顔をして
更にすごんでくる雪ンバに、
凄みのある笑顔を向けた音音。
「おとなしく聞いてさしあげれば、
嫌がらせを止めろですって?
盗人猛々しいとはあなたのことですわ。
ネタは上がっておりますから、
もう観念なさいませ」
「なにっ!?」
「まあ、うちの店の模倣は
料理のレベルが低いので模倣ともえませんので大目に見て差し上げるとして、
問題は、雪子と雪のふたりの使ってる手足用ケアクリームを、
唐辛子成分の入ったものにすり替えさせたことですわ!」
「何を言ってるんだい?」
「唐辛子、普通の人にとってはなんでもない成分だけど、
体の内側から体を温めるカプサイシンは、
雪女族にとって内部被曝にも近い症状を起こす猛毒!
クリームを毎日使わされれば、
どんなことになるかぐらいあなたにもわかるでしょう?」
「わしがすり替えた? 
それこそ証拠がないだろう!
証拠を出せ証拠を!」
凄んで押し出してくる雪ンバから、
音音を守るように立ちふさがったキザクラが、
「おうおうおう!
黙って聞いてりゃ言いたい放題言ってくれやがって。
証拠だと? 上等だ、これを見ろいっ!」
と言うと、バッと勢い良く回転しながら着物を脱いだ。
そこには一瞬にして美女に早変わりしたキザクラがいた。
「肩のキュウリの花の刺青を忘れたたぁ言わさねえぜっ!」
「お、おまえはハザクラっ!?」
「あるときは片目の老女ウバザクラ、あるときは伝説の競馬予想師サクラオー、
またあるときは美人キャバ嬢ハザクラ、しかしてその実態は、
正義と真実の使徒・この頃はやりの男の娘河童のキザクラ様だっ!」
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「げっ…げぇっ…」
ガマガエルのようなうめき声を上げた雪夫が、
弱音を吐き始める。
「ママっ…どうしよう…ボクあのオカマガッパに
いろいろ話しちゃったよぉ」
「ゆ、雪夫ちゃん…な、何を…」
「それにほかにも…。
あああああっ…オカマ…オカマはやだよぉ…」
「まあひどい…おねえぐらいには言って欲しいわぁ」
キザクラがさらにシナをつくって雪夫にウィンクすると、
雪夫は泡をふいて卒倒してしまった。
「観念していただきましょうか?
現世(うつしよ)での妖(あやかし)総取り締まりを任された弾正台。
その膝下たる鎌倉府での悪行の数々、
まことに許しがたいですわ。
この一件、
わたくし弾正忠化野音音の名において徹底的に調べあげ、
最低でも隠岐への終生遠島、
きっと申し付けてさしあげますわ。
引っ立てなさい」
その場にがっくりと膝を落としたかに見えた雪ンバだったが、
一瞬の隙をついて河童ガードの間をすり抜けると、
廊下の窓ガラスに体ごと突っ込んでいく。
ガラスの砕け散る音とともに脱出に成功した雪ンバは、
一目散に逃げ去っていく。
「追えっ! 逃がすな!」
キザクラの号令一下、河童ガードたちが後を追っていき、
その場に卒倒した雪夫は
残った河童ガードが引きずるようにしてその場から連れ出した。
「まあ、雪ンバが捕まるのも時間の問題。
これにて一件落着ですわ!」

つづく
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