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「二楽亭へようこそ!」その86 第8話 「二楽亭へようこそ!」その21 [小説]

「――意識もどります」
その声ではっとして目を開く。
目に入ってきたのは見慣れない天井の照明器具…。
気がつくと、私は病院らしき部屋のベッドに寝かされていた。
「結繪ちゃん~~っ!」
声のするほうを向くと、
音音がベッドに顎を乗せ、両手でベッドの端を掴んで、目をうるうるさせている。
「よかった~~。本当に心配しましたわ~~」
あのあと気を失うと同時にねえさまや瑞葉と分離したらしい。
ねえさまたちは問題なく目を覚ましたものの、
私だけ覚醒が遅れていたと教えられた。
「分離するときにほんの少しですけど、細胞の交換が行われたのです。
その拒絶反応ではないかと…」
静葉ねえさまが説明してくれる。
と同時に鏡も見せられると、ねえさまたちと同じ耳が生えている。
「たぶん今の結繪ちゃんは、
なにかしらの霊力が使えるようになっているかと思いますが」
そのときになってやっと、気を失う前の自分が何をしていたのかを思い出した。
「特異点は!? 三狼は!? みんなは無事なの!?」
興奮して起き上がろうとする私を、
「急に動いてはいけません」 
狐侍女の看護士さんたちが軽く抑えるようにして制す。
「大丈夫。ミニブラックホールは蒸発、みんな無事ですわ」
見れば、三狼や萌、Qちゃんや二狼にいさま、
そのほか小太郎以外の十三部衆の司、
一子ねえさまも検非違使別当飛鳥薫子も見える。
ほっとする私に、音音が要点を簡潔に教えてくれる。
「オーソドクス教会の施設等は、陰陽寮と按察使が制圧。
鎌倉攻めに参加した教団員の殆どはユダに吸収されたため、
こちらが拘束しているのは1000人ほど。
司祭級の連中、按針、ニコライ、タチアナは投降しました。
鬼化した市民たちには、教団施設で確保されたワクチンを順次接種中です」
「よかった…」
市民もみんなも無事。
あっ! そう言えば…。
「ねえねえ、萌ってどうして特異点から出てきたの?」
「はい。それはですね、
私が巻き込まれたあの霊的爆発のときのニューヨークには、
アメリカンネイティブの3大精霊がいた上に、
あの爆発を起こすためAOC(アメリカオーソドクス教会)の司祭の
多くが集っていたせいで、霊気が過剰反応した結果、
一時的に特異点が発生したようですね」
やっぱり薫子たち狙われてたんだ…。
「幽冥世に飛ばされた萌と護衛のナドワとその精霊は
ここ特異点の出口を目指していたところ、
幽冥世に渡っていた瑞葉たちに出会って現世に出てきたというわけですわ」
「日の本のあやかしだけだと
ユダを抑えきれなかったかもですが、
ナドワの契約する精霊がいてくれて助かったのです!」
瑞葉が続ける。
「まあ、これで国内問題は一段落なのです!」
「とはいえ、今回消滅したのはオーソドクス教会という第2契約者のごく一部、
異端にすぎません。
世界統一を目指す
ファーストからサードまでの唯一神を信じる連中は相変わらず健在なので
油断はできませんわ。
逆に、パワーバランスが崩れたことで
新たな動きがあるかもしれませんし…」
音音はそういうけど、私は自分の意識が無いウチに片付いてしまったので、
なんとなく実感がわかない。
「あと、今後の大問題として、
日本をおおっている結界があと1年ぐらいしかもたないと…」
「…もう力が続かないんだね…でも、
ユダが欲しがっていた天璽の力は使えないの?」
「あれは妲己クラスのあやかしが3名はいないと制御できないのです。
残念ながら今の日の本にはそれほどの力を持つ者はひとりもいないのです…」
「陰陽寮にもこのことは伝えました。
今後は結界消失後にそなえて検非違使、按察使などとも連携して
内外の問題に対処することになると思います」
「う~~、なんだか今までよりずっと大変なことになりそう…」
「まあ、とはいえ、今すぐというわけではないのです。
結繪ちゃんも目覚めたことですし、
早く回復祝いをしたいのです~~!」
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「今すぐはダメですよ」
ピシッと音音が釘を刺すとねえさまふたりがしゅんとする。
「でも今の数値からすると、2日後には回復祝い大丈夫ですよ。
2日かけて宴会の準備をいたしましょう」
とふたりをフォローした。

2日後の宴会は、弾正府の残り予算の半分を使ってしまい、
Qちゃん先輩が激怒したのは大きな誤算だった。
でもま、それも弾正府が日常に戻った証拠みたいな気がして
なんだかうれしくなった。

おわり
続編「豪快! 両国夢想」につづく

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moe

mikuさん おはようございます。
nice! ありがとうございます♪
by moe (2011-06-17 06:08) 

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