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「二楽亭へようこそ!」その74 第8話 「二楽亭へようこそ!」第一章 鎌倉攻防戦その9 [小説]

「--そうだ、ひとつ思い出したことがある」
ピラトが不意にしゃべり始める。
「1200年前に葛葉殿の母君=玉藻の前殿と同じ船で日本に渡ったとき、
当然ユダもそのことは知っていたんだが、
九尾殿には手を出さずにいたのだ」
「……どういうこと?」
それが今の事態とどう関係するのか、私にはさっぱりわからない。
「普通なら、あやかしが近くにいれば、
殺すか力ずくでも手下にするかするはずなのだ。
なので、少し不思議に思ったものだが、
これは、今思うと母君の力を恐れたということではないだろうか?」
「! それが本当なら、
葛葉ねえさまと静葉ねえさまが力を合われば…」
ひとすじの希望を見つけた思いでピラトに聞き返すと、
私の横で葛葉ねえさまが沈んだ声でつぶやいた。
「--ふたりが危ないのです…」
「えっ!? でも、幽冥世では援軍が…」
どういうこと!? だって向こうの援軍といっしょに
特異点回廊の出口で迎え討つって言ってたのに…。
「--ごめんなさい、幽冥世のあやかしたちは、
結界をはるために力を使っているので、殆ど戦力にならないの…。
鑑真…ユダを確実に葬るためには…j
「――どうするつもりだったの…?」
そう口に出したものの、答えは分かり切ってる。
音音と静葉ねえさまは、
自分たちを犠牲にして私たちを逃がそうとしたんだ。
「…でも、じゃあ早く特異点へ行かないとっ!」
「そうなのです!」
そう言うと、葛葉ねえさまは手を差し出す。
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その手を取りながら、
「鬼裂! ここが落ち着いたら、兵をまとめて稲村ヶ崎高校でQちゃんの指示を待って。
あと三狼のことも--」
と言いかけたところで、
「僕も行く…」
と三狼が戻ってきた。
見ると、ぐったりしたタチアナが鬼兵たちに抱えられるようにして
和が江島の方へ戻っていくのが見えた。
「おいおい、私の件はどうなってるんだっ!」
と叫ぶピラトに、
「あなたのおっしゃったことが誠なら、
戻ってきてなんとかして差し上げるのです」
「勝てるかどうか、はっきりと分からんのに待てと言うのか!」
「せいぜいわたくしたちが勝つよう、あなたの神にでも祈るといいのです」
そう言うと、私ごと中空に浮き上がったねえさまは
特異点目指して飛び立った。
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