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「二楽亭へようこそ!」その72 第8話 「二楽亭へようこそ!」第一章 鎌倉攻防戦 その7  [小説]

私たちの背後では三狼とタチアナ皇女大佐がにらみ合っているあいだに、
鬼裂、殺鬼の鬼切姉妹が本気モードになったようで、
鬼兵団を縦横無尽に蹂躙(じゅうりん)している。
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ああなっちゃうとあのふたりを止めるのはなかなか難しいんだけど…。
「早くしないと虎の子の鬼達が全滅してしまうのですよ」
「さあ、タチアナにも降服するように言って」
「それは無理だ。
僕は彼らに命令する立場にないし、
あいつとニコライは、
あいつらの目的があって戦ってるからな」
ピラトは深くため息を付くと再び話し始めた。
「僕--いや私は、ローマの終身独裁官になれるという
ヤツの甘い言葉に抗いきれなかった。
結果与えられたのは、記憶を受け継ぐという形での永遠の命だった。
2050年という命はいろいろなものを見せてくれたが、
人としての悟りも、神としての覚醒もない。
かわりに縁とエントロピーは増え、しがらむ一方だ…ははっ…」
(ローマ? 独裁官? ローマって…
この前世界史で習った…2000年前のあの古代ローマ…?)
「恋し愛しいと思う者、
敵対し殺しあうほど憎いと思う者、
それらの相手も長くても80年もすれば
年老いていなくなる…。
そして自分だけ取り残される…。
だが、その係累(けいるい)とはしがらんでいく…。
これが何度も繰り返されるが、
自分だけはその記憶を引き継いだまま
また新しい生を生きる。
この孤独がお前にわかるか?」
「それは……」
今、音音と別々に行動しているだけでも寂しいのに、
実際に二度と会えないと思ったら…。
でも、葛葉ねえさまだって、
私たち人間よりずっと長い人生を生きてる…。
「寂しさから逃れようと自殺したとしても
記憶は彼の用意した肉体に転送される。
死ぬ直前までの痛みの記憶もね--。
それなら、私の記憶を転送させる
彼を殺してしまおうと思った。
だが、彼は私の手に負える相手ではなかった。
最初の200年で彼を殺すことはあきらめたよ。
次の500年で自殺することもあきらめた。
でも私も安らぎたい。
では、どうすればいいか---、
答えはひとつだけ、
人類を一人残らず殺せばいいんだ」
「なっ…! 何勝手なことをっ!」
「死こそが安らぎ---。
ブッダの教えでも輪廻から解脱することが
肝要だというではないか。
では善行しか積みようのないけだものやムシに
転生したほうが解脱もはやそうではないか、
良くは知らんが…。
所詮何をしようとも宇宙の寿命からすれば
人の歴史など1万年続こうがまさに星の瞬き。
充実した人生など自己満足の集大成にすぎん!
であれば、人類が死という安らぎを得ることに
なんの問題がある?」
「何自分勝手なこと言ってるの?
あなたはそれでいいかもしれない。
2000年も生きて、そういう答えに到達したんだから。
だけど私たちはまだ自分の人生を生きてる最中なの。
それを意味も分からず、
あなたの自己満足のためにになんか
絶対に死ねない。
なんにも感じ取ってないいの。
私たちも自分の人生をまっとうして、
最後の瞬間に自己満足を得るだけかもしれない。
でも、私たちは笑って、泣いて、怒って--
みんなと生きて生きたいっ!!!
あんたの死ねない都合なんて私たちには関係ないっ!」
そう叫ぶ私を制して、
葛葉ねえさまがピラトに話しかけた。
「ねえ、あなたの死ねない体質を
私がなんとかして上げられそうなのです」
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