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「二楽亭へようこそ!」その66 第7話 「決戦前夜」第二章 ネゴシエイション その4 [小説]

気まずい沈黙を破るように新しい情報が入る。
「今、日本大使館より飛鳥中納言様の身柄が無事確保されたとの連絡が入りました…」
「萌! 萌は!?」
普段慌てることのない瑞葉が声を上ずらせて聞く。
「まだ詳細はわかりません。
中納言様は巫女2名に護られ、かすり傷も負われていないとこのとですが、
その他の方の安否は未確認です」
薫子は無事だった――。
だけど萌は…。
萌ny.jpg
友達が危ないのに、その現場に行くコトも出来ないの!?
「結繪ちゃん、萌のことが心配なのはわかりますわ。
でも、萌はああみえて銃器を扱わせたら検非違使庁でも3本の指に入るとか。
飛鳥中納言の護衛を務めるほどの実力の持ち主で、
瑞葉がパートナーに認めた萌は、
わたくしたちのお友達ではないですか。
それに状況から考えると、
たぶんあとひとりの巫女も萌と一緒にいると思いますし…」
音音の言うことは分かる。
もうひとりの巫女とその契約するあやかしの霊力も
静葉ねえさまと同等だと言われている。
霊的攻撃ではななく、物理的攻撃であれば
かすり傷ひとつおわせることはできないだろう。
だとすると葛葉ねえさまと離れた私が行ったとしても足手まといにしかならないのかもしれない…。
でも、行って助けられるのなら助けてあげたい――、
そう思うのは私のエゴなんだろうか…。
思い悩む私をあざ笑うように警戒警報が鳴り響いた。
「緊急警報! 材木座結界が消失しました!!
コードネーム山城……が…鑑真(がんじん)ですっ!
オーソドクスの聖人、鑑真が和賀江島(わがえじま)に上陸しましたっ!!!」
鑑真…オーソドクス極東教会の頂点に君臨する大主教。
仏教に帰依していたはずの鑑真が、
どうしてオーソドクス極東教会の首座に登りつめたのかは
未だに弾正府の情報部でも掴みかねている盲目の怪僧。
ここ1000年ほど、その姿は確認されていなかったが、
昨年、京でその姿が確認されると同時に、
オーソドクス教会の動きが活発化し始めていた。
こんなときになんで…。
「ほかにも三浦按針、トーマス・グラバーなど
司祭級リビングデッド多数を含む総数2万。
極東教会の総兵力だと思われますっ!」
司令部正面の大型モニタに
和賀江島の監視カメラの映像が映し出される。
何十ものホバークラフトが
和賀江島付近から材木座海岸へ上陸し、
そこから兵隊たちが続々と降り立って、
内陸部に向かって進撃を開始している。
「観光客もいる昼日中に上陸作戦なんて何を考えてるの!?」
そう叫ぶ司令部要員の疑問はすぐに解けた。
材木座の住宅街に設置してあるモニタからは
通りすがりの住人や観光客にガスを浴びせながら
侵攻してくる部隊の姿が映し出されていた。
「…一般人を無差別に鬼化させてる…」
司令部が沈黙した。
ごめん、萌、今は助けに行けない。
だけど、このタイミングでオーソドクス極東教会が総力戦を仕掛けてきたなら、
それはアメリカの爆破事件とは無関係ではないはず。
なら、敵の首魁・鑑真を倒すこと、
これがきっと萌を助けることにも繋がる。
「一子ねえ、音音、ふたりともありがと。
もう大丈夫っ! 今はできることだけするしかないよね」
そうふたりに言うと、目を瞑って息を整える。
緊急警報を聞いて司令部に集まった十三部衆の司たちと
司令部要員に向かって叫んだ。
「みんな、作戦会議を始めるよ!」

第二章 おしまい
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