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「二楽亭へようこそ」その40 第4話「付喪神といっしょに」その4 [小説]

「でも、この子は悪さなんかしないです!」
「話にならないですね…。いいからその人形を…」
と熊野さんが手を伸ばし、
私からフィギュアを取り上げようとした瞬間、
「瑞葉がついてれば問題ない」
と声をかけてきたのは、当の瑞葉ちゃんだった。
「え? 瑞葉様、
この検非違使の処へ行くとおっしゃるんですか?」
「うん。瑞葉はこの人、えーと…」
と言って私の方を見る瑞葉ちゃん。
まだ名乗ってなかったのを思い出して、
「私、桂木 萌です」
と名前を教えると、
「瑞葉はもえと暮らすの」
と明快に言い放った。
言われた熊野さんは意外にもあっさりとそのことを受け止め、
「わかりました。
では、弾正尹結繪様にそう伝えますので
桂木さん、あとはよしなに」
そう言うと、忽然と姿を消してしまった。
「よしなにって…」
一体何なに?
あまりの急展開に私の頭の中は、一瞬「?」マークだらけになった。
いっしょに暮らすって言われても、
みずはちゃんのご両親の了承もないのに--
と、どうしたらいいのか途方にくれるものの、
もしかして、
<いっしょに居る>というのは、
小さい子が好きになった人と別れたくなくて、
よく言うことなので、
きっとそんなものかなと思った私。
しばらくだったらウチに泊まってもらうのも
妹が出来たみたいですっごくいいかもなんて。
それにしても、この耳と尻尾良く出来てるなぁと感心して
じっくり見ると、
どう考えても直接地肌から生えているようにしか思えない。
(これって??)
またもや疑問符が頭上を飛び交う私の前に
巫女服を着た二人の女性がフイに現れた。
このふたりにも瑞葉ちゃんと同じように獣耳と尻尾がある。
違うのは、尻尾の本数で
ふたりともたくさんの尻尾がある。
「瑞葉、熊野から聞きました」
「この方と行きたいのですか?」
と口をそろえて言うのに、こっくりと頷く瑞葉。
それを見たふたりは、おもむろにこちらに向き直ると、
「桂木少尉萌様、
ご挨拶がおくれました。
私たちは、瑞葉の姉、葛葉と静葉と申します。
この瑞葉は妖狐妲己(だっき)を祖とする
九尾の狐玉藻の前の血に連なるもので、
先日、人としての形を取ったばかりなのです」
と自己紹介してくれた。
0101.jpg
「妖孤…? 人の形……?」
狐のあやかしってこと??
そいえば資料に弾正府を守護する
狐の神様のことが載ってた。
瑞葉ちゃんをじっと見ると
耳も尻尾も本物にしか見えない。
じゃあ瑞葉ちゃんも神様の子なの…?
「瑞葉が善狐になるか、
妖孤になるかは側にいる人間次第なのです。
私と静葉は良き人に育てられ、善狐となることができました。
瑞葉にも同じ善狐の道を歩んで欲しいと思っております。
あなたからは善なる香りがいたしますので、
安心して妹をお願いすることができます。
どうかこの瑞葉の願いを叶えてくださいませ」
とお願いされてしまった。
「私……」
言葉を飲み込む私に瑞葉ちゃんが、
「瑞葉、萌といっしょに行ってもいい?」
そう上目使いで聞いてくると、
そのかわいさに、私は決心した。
「かしこまりました。
不肖桂木少尉萌、全力でごいっしょに生活させていただきますね」
と笑顔で返事していた。
訳あってアパートで一人暮らしをしている私。
瑞葉ちゃんが何者だとしても、
私といっしょに暮らしたいといってくれるだけで充分だと思った。
こんなにかわいい妹といっしょに暮らせるって考えると、
ひとりきりでなんとなく色あせていた世界に
急にあざやかな色が付いたように感じた。

瑞葉ちゃんの着替えなど
生活用品一式を用意してもらうことになり、
学生食堂で待つことになった。
そこへ案内してもらう途中、
なんだか獣っぽい匂いがしたと思ったら、
急に突風がふいてスカートがまくれて……。
えっ?? 何これ?? お尻に何かが…。

その5につづく
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