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「二楽亭へようこそ」その36 「瑞葉が来た日」その6 [小説]

西御門学園の武道棟は、結界のせいで、
普通の人には四階建てにしか見えないけど、
実は鎌倉府条例違反の地上十四階建て。
その屋上には、大小ふたつの辰狐(しんこ)池と
貴狐(きこ)池を配した純和風の空中庭園がある。
この庭園は葛葉ねえさまたちの妖力で、
秋に季節が固定されている。
その池の畔(ほとり)に佇(たたず)む二楽亭。
その二楽亭の二階の大部屋は、今や宴もたけなわ。
Qちゃんは鎌倉府長からの依頼も無事解決してご満悦だし、
二狼にいさまも、無事に鬼退治を完了して、
山盛りのご馳走を黙々と平らげている。
座の中央には、巫女服やメイド服を着た
狐耳、きつねの尻尾な眷属の女の子たちと
弾正府に所属する西御門学園の女子生徒たちが、
例の小狐=瑞葉を囲んでかわいがっている。
でも、瑞葉はまだ固い表情を崩さない。
そんな様子を見ていたら、
窓際の廊下を三狼が通りかかったのが目の端に入ったので、追いかけて声を掛ける。
「三狼!」
「……?」
「ねえ、三狼、さっきはなんでアソコに来たの?」
「…それは、鬼を探してたら、妙な気を感じて…。
意識を集中したら、結繪に呼ばれたような気がしたんだ…」
「ふーん。結界の中だったのによくわかったね。
でも、ま、ホントに助かったよ。ありがと」
そういうと自分の席に戻る。
葛葉ねえさまと静葉ねえさまは、
隣に座ってる音音のそばで、おっきな杯に大吟醸『九尾の狐』をそそいで、
ぐ――っと飲みながら瑞葉のことを話している。
「瑞葉も私たちと同じ殺生石から生まれた子なのです」
「ですが、ちょっと石のかけらが小さくて、
目覚めるまで600年もかかったみたいですわ」
目覚めたものの、初めて目にする電車とか自動車とかが怖くて、
ああして近づくモノを威嚇していたらしい。
「でもあの子のポテンシャルは相当ですわね」
「ええ、この前生まれたばかりだというのに、
あれだけの霊を実体化して操るのですから……」
(実体化って…じゃあ、刺されたらホントに死んでた?)
ガクブルしている私に、葛葉ねえさまは、
「でも、あの子も人を怖がっているだけで、
決して害をなそうとしたわけではないのです。
人との共存が出来るように、
あの子の能力を伸ばしてあげたいのです」
と言った。
コクンと頷く私と音音を見て、瑞葉に声を掛ける。
「瑞葉、こっちにおいでなさい」
そう言われて、立ち上がると、
ててっと葛葉ねえさまたちの正面にやってくる瑞葉。
「瑞葉、そこにお座りなさい。こちらは結繪様と音音様。
このおふたりがこの『二楽亭』のご主人様です」
静葉ねえさまが続ける。
「怖かったかったとは言え、
あなたは、お二人に怪我をさせるところでした」
「静葉ねえさま、私たちは大丈夫だったから、ね」
「いいえ、今日はお二人にご迷惑をお掛けしたのです。
瑞葉、ちゃんと謝れますね?」
「はい」
瑞葉はそう返事すると、こちらを向いて、その場でかしこまり、
「本日は、恐慌をきたしていたとは申せ、
この瑞葉、結繪様、音音様には大変なご迷惑をお掛けしてしまいました。
誠に申し訳なく、伏してお詫び申し上げる次第でございます。
なにとぞ、ご寛恕(かんじょ)ありますよう、
お願い申し上げます」
と完璧に謝ってみせた。
mizu.JPG
私、こんな日本語使ったことないよ、この子メチャクチャ頭いい?
謝られてパニッくった格好で、
「は、はぁ」
と脊椎反射的に答えてしまうものの。
音音の耳元で、
「音音ちゃん、ごかんじょってなに?」
と聞くと、
「許してくださいって…」
と説明してくれた。
音音は、
「はい、ではコレで万事解決ですわね」
と言うと、瑞葉を抱き上げる。
「ここは、人もあやかしも楽しく生きられるようにという願いを込めて作られたので、
『二楽亭』というのですわ」
それを聞いて私も続ける。
「今日からここが瑞葉のお家なんだよ。仲良くしようね」
みんなが一斉に瑞葉に言う。
「二楽亭へようこそ!」
その言葉を聞いて、瑞葉は、
今空に浮かんでいる、大きな満月に負けないほどの満面の笑みを浮かべた。

「瑞葉が来た日」おしまい
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moe

はっこうさん こんばんは。
nice! ありがとうございます♪
by moe (2010-05-30 23:53) 

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